ビスフェノールAと内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)問題


ビスフェノールA安全性五社研究会

2000年12月1日
2005年6月1日改訂


1.はじめに

 米国で出版された"Our Stolen Future"(日本語版は「奪われし未来」1997年9月出版)が端緒となり、ある種の化学物質がヒトや野生動物の生殖に悪影響を及ぼすのではないかという問題提起がされました。
ビスフェノールAを製造する国内の5社は1997年9月に研究会を発足させ、この問題の科学的事実の解明に取り組んできました。


2.ビスフェノールAのホルモン作用

 ビスフェノールAは試験管の中での試験や投与する化学物質の作用をみるため卵巣除去という特殊な処置をした動物での試験で弱いながら女性ホルモン様作用があることが報告されています。その程度はヒトの体内で作られる女性ホルモンの一万分の一以下の弱いものであり、ヒトおよび野生生物に影響を与えた事実は確認されていません。
 ヒトは男性も女性も体内で女性ホルモンが作られ、体の機能に非常に重要な役割を担っています。その量が多少変動しても、ヒトの体はそれをうまく調節して一定の状態を保つ(恒常性といいます)ようになっています。
ビスフェノールAが仮にヒトの体内に取り込まれても、作用が弱い上にこの物質が体内で代謝、排泄され易いため直ちに体外に出てしまい、生殖に係わる有害な影響はないと考えられます。このことは次に述べる動物試験によって確かめられています。


3.動物を用いた生殖影響試験

 毒性に係わる試験は上に述べた試験管での試験あるいは特殊な処置をした動物を用いた試験等で基礎的な研究を行いますが、女性ホルモン様作用があることが直ちにヒトや動物に有害とは言えません。実際に生殖影響があるかどうか確認するために、体内での吸収、代謝、分解、排泄等の全ての条件を含めたものとして、ラットやマウス等の動物を用いて試験をします。
 妊娠中及び授乳中のラットおよびマウスのメスにビスフェノールAを餌に混ぜて投与し、離乳後の子にも投与を続けて生殖影響をみる研究が行われました。その結果、生殖影響に関する各指標に異常は認められませんでした。このことから妊娠中の胎児への暴露も含めて生殖影響はないと考えられます。


4.低用量での生殖影響について

 米国ミズーリ州立大学の研究者がマウスを用いた試験で、ビスフェノールAは非常に低用量での投与により雄の子の前立腺の重量を増大させるという報告をし、波紋を投げかけていました。日米欧のビスフェノールA関連業界では共同でこの試験の大規模な追試を行いました。ミズーリ州立大学と同じ条件で、更に動物数や検査項目も増やして慎重に試験を行いました。また、Dr.Ashbyら(Astra Zeneca社 中央毒性研究所)も同様に再現性試験を行い、低用量での影響は認められないことを確認しています。


5.ビスフェノールAの安全基準について

 ビスフェノールAは食品衛生法によってポリカーボネート製食器からの溶出基準が2.5ppm以下と定められています。この算出方法は、当研究会の調査では以下のような考え方基づいているとものと推定しています。
 化学物質の安全基準を設定するには上記の生殖影響試験の他に、発癌性試験、催奇形性試験および慢性毒性試験等を行います。ビスフェノールAについても生殖影響試験、慢性毒性試験および発癌性試験などの各種試験が行われています。生殖影響試験では50mg/kg/日で影響がみられず、慢性毒性試験では50mg/kg/日でわずかに体重の減少があった他は影響はみられませんでした。これらの結果から、50mg/kg/日を基準にして安全係数1/1000をかけた0.05mg/kg/日をヒトでの許容摂取量としました。すなわち、ヒトが1日に体重1kg当たり生涯摂取し続けても影響がない量は0.05mgということです。日米欧とも同じ値を採用しています。
 日本の場合、成人の体重を50kgとしていますので1人1日当たり2.5mg以下なら影響ない用量ということになります。ポリカーボネート製の容器・包装に入った食品を1日当たり1kg摂取するという前提を置いておりますので、ビスフェノールAとしては2.5ppm以下の溶出なら影響ないということになります。


6.安全性の新たな確認

 前述の低用量での生殖影響に関する論文が発表された後にも、妊娠中の母親に低用量でビスフェノールAを投与すると生まれた子に生殖影響がある、との新たな報告がありました。
 我々は一層の安全性を確認するために、低用量確認試験に続いて3世代生殖毒性試験を行ないました。この試験は内分泌かく乱作用を検査するのに最も信頼できるとされている試験方法で、ラットを用いて親から子、孫そしてひ孫へと3世代にわたり投与を続け生殖毒性を見るというものです。これは、低用量から高用量までの影響を確認するため、投与する量を0.001〜500mg/kg/日と広範囲にし、さらに女性ホルモン様作用による影響を見るための各種検査項目を加えるという大がかりなものとなりました。
 その試験結果は次のとおりです。生殖毒性についての無毒性量(これ以下では毒性が認められない量)は50mg/kg/日でわずかに体重増加量の減少が認められ、無毒性量は5mg/kg/日でした。これ以下の低用量での影響は認められませんでした。
 これらの結果は従来の試験で得られたものとほぼ同様の値であり、現行の許容摂取量である0.05mg/kg/日の正しさを再確認できたと考えます。
 また、日本の厚生労働省も低用量でのビスフェノールAの作用を検査する目的で、ラットを用いた2世代生殖毒性試験を行ない、影響のないことを確認しています。
 しかし、ビスフェノールAの安全性について社会に提起されている問題は重要であり、今後も真摯な姿勢で産・官・学及び国際的な連携の下に研究を進めていく所存です。

以上




●参考資料
(1) ビスフェノールAの各種安全性試験結果のまとめ
   資料−1参照

(2) 低濃度におけるDr. vom Saalらの試験と各種試験の比較
   資料−2参照

(3) 3世代生殖毒性試験結果
   資料−3参照




お問い合わせ: ビスフェノールA安全五社研究会




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